占いコラム 1

インド占星術

運命の把握に適した占星術

インド占星術は、人の死亡時期を含め、人生上のあらゆる事柄について占うことができる、未来予測に優れた力を発揮する実践的な占星術です。その実用性の高さから、近年の欧米では、運命を把握するための占星術としてのインド占星術に対する評価が高くなってきており、西洋占星術とインド占星術を併用する占星術師の他、インド占星術を専門にする占星術師が増えているようです。

日本では、一昔前は、西洋占星術と比べてインド占星術の認知度はあまり高くありませんでした。ところが最近では、日本でも、運命をより具体的に、そしてより詳しく把握することのできるインド占星術に関心を持ち、その技法を学んだり実践に取り入れたりしている占星術師が以前とは比較にならないほど多くなっています。

ここで言う『運命』とは、容姿・家柄・家庭環境・才能・いろんな楽しみや苦しみなど、生来的にすでに決められている要素である『宿命』およびその発現時期である『運気』の二つをあわせたもので、インド哲学や仏教で『カルマ』と呼ばれているものです。

インド占星術で使用する9つの惑星

インド占星術では、出生年月日時と出生場所をもとに、生まれた瞬間における惑星の位置を計算してホロスコープ(天体図)を作成します。このホロスコープをジャンマ・クンダリー(出生図)と呼びます。

インド占星術で使用する惑星は、太陽・月・火星・水星・木星・金星・土星・ラーフ(ドラゴンヘッド)・ケートゥ(ドラゴンテイル)の9つです。天文学的には太陽・月・ラーフ・ケートゥは惑星ではありませんが、インド占星術では、便宜的に惑星とみなしています。

インド占星術では、西洋の古典占星術と同様、最近の西洋占星術で使用している天王星・海王星・冥王星などのいわゆるトランスサタニアン惑星を使用しません。その代わり、ハウスの支配こそしないものの、ラーフとケートゥを他の惑星と同じレベルに重要視しています。

ヴァルガ(分割図)で詳細な判断を

インド占星術では、基本となる出生図から、計算により、さらに15種類のチャートを導き出します。導き出されたチャートをヴァルガ・クンダリー(分割図)と呼び、何も手を加えていない基本の出生図をラーシと呼んでいます。

ラーシの他に、ホーラー、ドレーッカナなど、ラーシを含め全部で16種類の分割図を使用します。ラーシは人生全般について占うために使用されますが、それ以外の分割図は、兄弟、子供、両親、不動産、健康、乗り物、教育、職業、・・・などなど、特定のテーマについて詳細に分析するときにテーマに応じて使用されます。分割図を使わずにラーシだけで占うインド占星術師もいますが、分割図なしでは正確な占いは難しいでしょう。

分割図の中で、ナヴァーンシャ(9分割)と呼ばれる分割図は特に重要です。ラーシと同様に、人生全般について占うために使用されています。ラーシとナヴァーンシャは、いつもセットで使用するべきで、インド占星術において、ナヴァーンシャを無視した判断は失敗を招くことになります。また、結婚や人間関係を占うときには、このナヴァーンシャを特に重視します。ナヴァーンシャは結婚を占うためだけに使用するものだと主張する占星術師もいますが、それは誤りです。

インド占星術では、この分割図を活用することにより(および、ホロスコープの特別な見方により)、ホロスコープの持ち主のことだけではなく、その家族や親戚など縁のある人の人生全般にわたって占うこともできます。たとえば、ある人の生年月日時と出生地がわかれば、その人のホロスコープから、父親、母親、兄、姉、弟、妹はもちろんのこと、親戚の叔父さん、叔母さん、甥や姪など一人一人の人生全般についても占うことができます。これは、インド占星術の大きな特徴の一つです(ある人のホロスコープからその人と縁のある人のことを占うことができますが、本人自身のホロスコープがもっとも重要であることは言うまでもありません)。

ちなみに、西洋占星術のハーモニック・チャート(調波図)はイギリスのジョン・アディがインド占星術の分割図(ヴァルガ・クンダリー)をヒントにして開発したものとされています。しかし、ジョン・アディのの開発したとされるハーモニック技法は、実用性に乏しく、これを信頼して活用できる段階には未だ到達していません。インド占星術の分割図はジョン・アディが開発したハーモニック・チャートと比べてはるかに実用性が高いものであり、人生の各分野について検討する際に欠かせない重要なものです。

『ヨーガ』と『ダシャー』で運命を知る

運命を把握するためにもっとも重要な技法は『ヨーガ』と『ダシャー』です。『ヨーガ』によって宿命を把握し、『ダシャー』によってそれが発現する時期を知ることができます。これらを実際に使用して有効性を実感した後は、それ抜きの占星術には決して後戻りできなくなるでしょう。

インド占星術には、ゴーチャラ(トランジット)、アシュタカヴァルガ、ブリグのプログレッション、その他、すばらしい技法がたくさんありますが、これらはあくまで『ヨーガ』と『ダシャー』を適用した後に考慮すべきものです。

『ヨーガ』は、サンスクリット語で『結合』を意味し、インド占星術では、惑星と惑星、惑星と星座、惑星とハウス、惑星と星座とハウスなど、相互の組み合わせを意味しています。この『ヨーガ』は、基本形だけでも何千種類も存在しているため、そのヴァリエーションまで考慮すると、数えきれないほど多くの種類が存在していることになりますが、その中でもっとも重要な基本形は数十種類または数百種類に絞ることができます。インド占星術では、この数々の『ヨーガ』の組み合わせおよびそれらの強弱により、人によって千差万別の宿命、すなわち、どのような苦楽やどのような成功失敗をそのホロスコープの持ち主が経験するのかについて明瞭に読み解いていきます。

『ダシャー』は、出生図中の各惑星が強く作用する時期を教えてくれるインド占星術の未来予測技法です。これにより、『ヨーガ』によって示されている宿命が現象化する時期を知ることができます。

たとえば、もし木星がダシャーの支配星であれば、木星が関連するヨーガが現象化します。そして、木星の支配するハウス、在住するハウス、木星の関連するアスペクトなど、木星がホロスコープに与える影響が強くなります。そのため、インド占星術の知識が乏しい場合でも、西洋占星術にダシャーを取り入れることはできます。西洋占星術の中にこれを取り入れる場合、そのとき作用しているダシャーの支配星のアスペクト(出生図、進行図、トランジットなどにおける)を中心に分析することにより、占いの的中率が向上するでしょう。

インド占星術と西洋占星術の占いシステムは、実在する惑星をもちいることや、12星座、12ハウス、アスペクトなどの中に、共通する要素が多々あります。しかし、12星座の分割方法、12ハウスの分割方法、アスペクト方法など、両者の間には、かなり大きな違いもあり、似て非なるものとも言えます。そのため、インド占星術と西洋占星術を併用するには、書籍上の知識だけですぐに使用し始めるのではなく、実際にいろんなチャートを使ってその技術の有効性を調べ、それぞれの長所短所に精通していなければなりません。

西洋占星術ではハウスが明確には機能していませんが、インド占星術ではハウスが明確に機能しています。