占いコラム 7

サイデリアル星座とトロピカル星座

占星術における12星座

占星術では、惑星の位置を表示するために12星座を使用します。

この12星座は、太陽系の惑星の通り道(黄道)であり、牡羊座・牡牛座・双子座・蟹座・獅子座・乙女座・天秤座・蠍座・射手座・山羊座・水瓶座・魚座の順番に、それぞれ均等に30度ずつの幅をもって並んでいます。

占星術では、この12星座のことを獣帯あるいは星座帯と呼んでいます。星座帯にはサイデリアル方式とトロピカル方式の二種類があり、それらはどちらも夜空に見える星座とは別のものです。

サイデリアル方式の星座帯は夜空に見える星座と同じものであるという誤解が一部にあるようですが、これは正しくありません。夜空に見える星座の幅は、どの星座も、サイデリアル星座帯とは違って不均等です。

サイデリアル星座帯

サイデリアル星座帯は、西洋星術の起源とされるバビロニア占星術や、インド占星術で使用されているものです。このサイデリアル方式では、ある恒星の位置を基準として、牡羊座から魚座までの12星座それぞれに30度ずつを均等に割り当てています。

この基準となる恒星には諸説ありますが、現在のほとんどのインド占星術師は、インド政府が公認している、恒星スピカから180度の位置をスタート地点とするラヒリ(あるいはチトラパクシャ)方式を採用しており、少なくともサイデリアル星座帯を使用しているインド占星術の世界での見解はほぼ統一されています。この事実から、サイデリアル星座帯は基準が不明確なためトロピカル星座帯よりも信頼性が低いという一部の指摘は的外れであることがわかります。

インド占星術の技法は、ラヒリ方式(チトラパクシャ)以外のアヤナーンシャ(ラーマン、ユクテスワ、フェーガンなど)を使用したサイデリアル星座帯では機能しないので注意が必要です。

ラヒリ方式のサイデリアル星座帯の有効性については、トランジットの惑星が各星座を移動(サインイングレス)するときに引き起こす現象の変化を観察することによっても理解することができます。

このサイデリアル星座帯は、夜空に見える星座と同一ではないものの、かなりの部分が重なっています。また、この方式は、動きのない恒星の位置を基準にしているため、星座が空間に固定されており(『サイデリアル星座帯』は『恒星の星座帯』という意味)、多くの年数を経てもほとんど動くことがないため、この方式の星座帯は固定星座帯とも呼ばれています。

トロピカル星座帯

トロピカル星座帯は、現在の西洋占星術で使用されているものであり、そこから派生した星座占いもこれを使用しています。『トロピカル星座帯』は、『回帰線の星座帯』という意味です。トロピカル星座帯は、春分の瞬間に太陽が位置しているポイントを牡羊座の0度と定め、そこを基準として、牡羊座から魚座までの12星座にそれぞれ30度ずつ均等に割り当てる方式です。

トロピカル星座帯の基準となる春分点は72年に1度の割合で毎年少しずつ逆行しているため、それにともなって星座帯全体が移動し続けています。そのため、トロピカル方式の星座帯は移動星座帯とも呼ばれています。現在のトロピカル方式の星座の位置は、夜空に見える星座の位置から大きく離れており、同様にサイデリアル方式の星座帯からも現在では約24度離れています。

このようにトロピカル星座帯は、春分点の移動にともない、時の経過とともに少しずつ移動していく星座帯ですが、別の言い方をすると、トロピカル星座帯は春分点という時間軸に固定された星座帯であるということもできます。

西洋占星術の起源であるバビロニア占星術ではサイデリアル方式の星座帯を使用していましたが、西洋占星術では、ギリシャの天文学者ヒッパルコスが紀元前2世紀に歳差を発見して以降に、春分点を牡羊座の0度と定めるトロピカル方式を採用するようになったものと推測されています。

トロピカル星座とサイデリアル星座は、結局どちらが正しいのか、どちらを使用すべきなのか?

西洋占星術かインド占星術のどちらかだけを実践する場合は良いのですが、両方の占星術を併用して実践しようとする場合、どちらの星座帯を使用すれば良いのかという疑問が生じるかもしれません。

占星術における星座帯には惑星の位置を表示するための物差しとしての役割があり、現代の西洋占星術やコスモバイオロジーでは、まず、惑星と惑星の角度(アスペクト)を測るために使用されています。この目的のためには、トロピカル星座でもサイデリアル星座でも占いの結果に大きな違いは生じません。

星座帯は、西洋占星術においては、各惑星(特に太陽)の在住星座による性格分析を行うときにも重要な要素となります。この在住星座による性格分析については、トロピカル星座帯ではよく的中する一方、サイデリアル星座ではあまり機能しないと言われることがあります。そして、このことは「トロピカル星座帯は正しく、サイデリアル星座帯は間違っている」という一部の主張の根拠の一つになっているように思われます。

これについては、最近の星座占いは、もともとトロピカル星座帯を土台として検証されてきたものであり、出版されている星座占いの書籍もそれがベースになっているため、このテーマに関してトロピカル星座帯の方がしっくりくるのは当然のことと言えます。

しかし、ハウスシステム(惑星の支配関係など)や惑星の品位(高揚や減衰)など、西洋占星術とインド占星術の両方に存在している占星術の基本原則は、インド占星術で重視されている一方、一般的な西洋占星術(ホラリーを除く)ではあまり重視されていないという実態があります。

なぜなら、これらの占星術の基本原則は、トロピカル星座帯では機能せず有効性が実感できないためです。一方、ラヒリ方式のサイデリアル星座帯では、明確に機能しているため有効性をはっきりと実感することができ、実際にそれらの要素が占星術の的中率に大きく影響しているからです。

西洋占星術にインド占星術で信頼されている技法を取り入れるには

西洋占星術の実践の中にインド占星術で信頼されている予測技法を取り入れることは可能ですが、インド占星術の技法を使用する際には必ずラヒリ方式のサイデリアル星座帯を使用しなければならない点に注意が必要です。

この点にさえ注意すれば、サイデリアル星座帯を使用して、インド占星術で使用される『ダシャー』や『分割図』、あるいは『惑星の品位』や『ハウス』など最近の西洋占星術であまり信頼されなくなっている占星術要素を実践に取り入れることにより、これまで以上に占いの精度を高めることができるはずです。