占いコラム35
【 月の生来的な吉凶の判定方法(1) 】
楠 正晴
月の生来的な吉凶の見方についての疑問
占いコラム06『吉星と凶星』では、各惑星の生来的な吉凶について触れました。そこでは、月について、次のように説明しています。
「月は、その状態によって、吉星になったり凶星になったりします。新月から満月へ向かう月は吉星で、満月に近い(太陽から離れている)ほど吉の作用が強くなります。そして、満月に近い月は、木星と同等の大吉星となります。・・・月は、その状態よって吉凶が変化することは前述のとおりです。そして、満月から新月へ向かう月は凶星で、新月に近い(太陽に近い)ほど凶の作用が強くなります。」
ところが最近、某インド占星術関連サイトで、上記のようなインド占星術の一般的な見方に関して、「この月に生来的吉凶分類について、英語の誤訳から生じたと思われる吉凶解釈が、一部で定着しているようです。」(原文どおり)という記述が出ているけれど、本当はどちらが正しいのか知りたいという質問が寄せられました。
これに対する答えは簡単です。インド占星術の場合、基本的な原則の枠組みはインド占星術の古典の中にすべて示されているので、それらの古典を何冊か調べてみれば、簡単にその答えが見つかるはずです。
これは、インド占星術古典学習ソフト『ブックシェルフ』を使用すればとても簡単なことです。古典を端から端まで読む必要はありません。いくつかのキーワードをインプットして情報を検索すれば、複数のインド占星術古典の中から、すぐに該当する記述がリストアップされます。ありがたいことに、『ブックシェルフ』は、このような作業をわずか数秒で処理してくれるのです。
深く理解するためには、もちろん実際のホロスコープに当てはめてその作用を確かめる必要がありますが、いろんなインド占星術古典を調べることにより、少なくともインド占星術の標準的な見方を知ることがでます。特に複数の古典に共通する記述が見つかれば、その記述の信頼性は非常に高くなり、無視できないものとなります。
とはいえ、これらの古典の原文はサンスクリット語で記載されています。これらの英語訳は出版されているものの、日本語訳は残念ながらまだ出版されていません。
そこで、今回は、月の生来的な吉凶の判定方法というテーマに絞り、インド占星術の初心者にもわかるように詳しく説明したいと思います。
※16冊分のインド占星術古典が収録されたインド占星術学習ソフト『ブックシェルフ』には、サンスクリット語原文ではなく、英語訳のテキストだけが収録されています。

月の生来的な吉凶を判定するための2つの原則
上記の月の吉凶の判定方法は、以下の2つの原則に分けることができます。
(1)シュクラパクシャの月は強く(吉)、クリシュナパクシャの月は弱い(凶)。
(2)太陽から離れた明るい月は強く(吉)、太陽に近い暗い月は弱い(凶)。
※『ブリハットジャータカ』や『サルヴァルタチンタマニ』などのインド占星術古典によると、太陽から72度以内にある月は弱く、それより離れた月は強いとされています。
これら2つの原則は、どちらかが正しくてどちらかが間違っているということではありません。実際の占い鑑定のときには、どちらも無視することなく、これら2つを両方とも考慮する必要があります。

『シュクラパクシャ』および『クリシュナパクシャ』の定義
『シュクラパクシャ』は、太陰月の30日サイクルにおける、新月から満月に向かう半月(15日間)を表しており、この半月(15日間)には、月の光は増大し続けます。そのためインド占星術では、この『シュクラパクシャ』の月を吉とみなしています。
一方、『クリシュナパクシャ』は、太陰月の30日サイクルにおける、満月から新月に向かう半月(15日間)を表しており、この半月(15日間)には、月の光は減少し続けます。そのためインド占星術では、この『クリシュナパクシャ』の月を凶とみなしています。
この『シュクラパクシャ』と『クリシュナパクシャ』を識別することが、月の生来的な吉凶を判定するための出発点となります。
※「太陰月の30日サイクル」とは、太陽よりも早く動いている月が、太陽と同じ位置にある新月からスタートし、太陽から離れていきながら、太陽の対向にくる満月を経て、太陽に近づいていって、新月に戻るまでの30日間の周期のことです。

『シュクラパクシャ』と『クリシュナパクシャ』の適切な訳語は?
サンスクリット語の『シュクラパクシャ(Shukla Paksha)』は、逐語訳すると『Bright Half(明るい半分)』となりますが、これはその月が明るいという意味ではなく、新月から満月に向かい、月が光を増して明るくなっていく期間のことです。そのため一般的に、インド占星術古典の英訳本などでは『シュクラパクシャ(Shukla Paksha)』は、天文学や占星術の専門用語を用いて、『Waxing Moon(満ちる月)』と意訳されています。
同じく『クリシュナパクシャ(Krishna Paksha)』は、逐語訳すると『Dark Half(暗い半分)』となりますが、これはその月が暗いという意味ではなく、満月から新月に向かい、月が光を失って暗くなっていく期間のことです。そのため、こちらも同様に、天文学や占星術の専門用語を用いて『Waning Moon(欠ける月)』と意訳されるのが一般的です。
※某インド占星術関連サイトには「インド占星術の専門用語としての Waxing Moon は『満月側に近い光の強い月』、 Waning Moon
は『新月側に近い光の弱い月』を意味し、欠けていくか満ちていくかを問いません。」と記載されていますが、これは明らかに間違いです。

(2)の原則による修正
前述の(1)の原則によって示された『月の相』は、月の吉凶を判定する上での第一原則となります。これに、(2)の原則による修正を加えると、以下のようになります。
シュクラパクシャ(Waxing Moon)の中でも、月は、満月に近ければ近いほど強力になり、それに応じてその吉作用がますます大きくなります。一般的に、シュクラパクシャの最初の10日間の月の光はまだ弱いため中吉となりますが、それ以降の5日間の月の光はとても強くなるため大吉とされています。
それでは、(1)の原則で凶とされたクリシュナパクシャ(Waning Moon)の場合はどうでしょうか?
たしかに、大まかな分類によると、光が減少する方向へ向かうクリシュナパクシャは凶とされています。しかし、多くのインド占星術古典によると、月が欠け始めてから最初の5日間は、月の光がまだ十分に強い状態にあるため、クリシュナパクシャであるにも関わらず吉(あるいは大吉)とされています。それ以降の10日間の月は、光が弱い上に、さらにその光が減少する方向へ向かうため大凶となります。
次の占いコラム36『月の生来的な吉凶の判定方法(2)』では、インド占星術古典に記載されている内容を引用しながら、月の生来的な吉凶の判定方法について、さらに掘り下げて説明します。

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