占いコラム 20

惑星の高揚と減衰(ウッチャとニーチャ)

高揚と減衰(ウッチャとニーチャ)

ドラゴンヘッドとドラゴンテイル(ラーフとケートゥ)以外の7惑星(太陽、月、火星、水星、木星、金星、土星)には、それぞれ高揚する星座と減衰する星座が定められています。

惑星は、高揚星座に位置するとき、最大限の力を発揮して良い作用を及ぼす一方、減衰星座に位置するときには最小限の力しか発揮できず、良い作用を及ぼす力が弱くなったり悪い作用を及ぼすこともあります。

この高揚(ウッチャ)と減衰(ニーチャ)の原則は、インド占星術において、惑星の作用の良し悪しを判断する際に不可欠な要素です。

西洋占星術にも、高揚星座や減衰星座など、惑星の品位(ディグニティー)に関する同様の概念が存在していますが、インド占星術の場合と異なり、ホラリー占星術の分野以外ではさほど重要視されていないという実態があります。

その考慮されていない理由は、惑星の品位を判定するための土台となる星座帯(トロピカル星座帯)がこの目的では機能していないためと思われます。

※高揚と減衰に関して、ラーフとケートゥには、明確な定説がありませんが、高揚星座として、ラーフに牡牛座、ケートゥに蠍座、減衰星座として、ラーフに蠍座、ケートゥに牡牛座を対応させるという説が有力です。経験上、この説は、正しいように思われます。

※サンスクリット語で、「ウッチャ」は「高貴」を意味し、「ニーチャ」は「卑賤」を意味します。英語では、同じ概念を、それぞれ、"Exaltation"(エグザルテーション)、"Debilitation"(デビリテーション)と呼んでいます。

高揚の度数と減衰の度数

インド占星術では、各惑星ごとに高揚の星座や減衰の星座だけでなく、その度数まで定められています。

例えば、太陽は、牡羊座の10度でもっとも高揚し、その度数を過ぎると高揚の作用は弱くなっていきます。

逆に、減衰の星座は、高揚星座の対向星座にあたり、太陽は、天秤座(牡羊座の対向星座)の10度でもっとも減衰し、その度数を過ぎると減衰の作用は弱くなっていきます。

以下に、それぞれの惑星についての高揚星座と減衰星座を記します。

惑星 太陽 火星 水星 木星 金星 土星
高揚 牡羊座
10度
牡牛座
3度
山羊座
28度
乙女座
15度
蟹座
5度
魚座
27度
天秤座
20度
減衰 天秤座
10度
蠍座
3度
蟹座
28度
魚座
15度
山羊座
5度
乙女座
27度
牡羊座
20度

※伝統的な西洋占星術の古典によると、インド占星術と同様に、高揚や減衰について度数まで考慮していたようです。

※上の表は、サイデリアル星座帯でしか機能しません。

※天王星・海王星・冥王星などのトランスサタニアン惑星には高揚・減衰がありません。

高揚と減衰は生来的および機能的象意の両方に作用する

高揚や減衰は、生来的象意に影響します。例えば、太陽については、「父親、自我、名誉、心臓」といったテーマに影響してきます。

さらに、太陽が1室を支配している場合(すなわち、獅子座のアセンダントの場合)、1室の支配星として「身体、自我、性格、頭」など、機能的象意にも影響します。

また、一般的に、惑星の高揚や減衰は、身体に与える影響が大きいようです。その高揚あるいは減衰している惑星が、1室(身体を表すハウス)と関連する惑星(すなわち、1室の支配星、在住星、あるいはそれらにアスペクトする惑星)であるときは、特にその傾向が強くなります。

例えば、1室の獅子座を支配する太陽が減衰の天秤座10度に在住している場合は、太陽が示す身体部位である『心臓』に弱点が出る傾向があります。

※惑星の高揚と減衰を考慮することは重要ですが、それ以外に多くの要素を考慮しなければ最終結論は出せません。高揚と減衰を重視しすぎて、それだけで結論を下すことのないようにご注意ください。

ダシャーによって高揚・減衰の作用を理解できる

インド占星術の未来予測技法ダシャーを使用し、その惑星が作用する時期に経験してきた出来事を検証することにより、惑星の高揚と減衰の原則について、その作用を実感できるはずです。特に、ある惑星が、高揚の度数や減衰の度数の近くにあるときに作用は強くなります。

下のチャートを見てください。

       
  心臓が悪くなる
ケース
 

土星

ASC

   

太陽10°

 

1室(獅子座)の支配星・太陽が、3室天秤座の10度で減衰しています。そこに、6室(病気)と7室(マーラカ)の支配星である土星が、6室(病気)から、アスペクトすることにより、減衰した太陽をさらに傷つけています。

このようなケースでは、減衰した太陽のマハーダシャー(メインのサイクル)とそれに悪影響を及ぼしている土星のアンタラダシャー(サブのサイクル)が巡ってくると、減衰した太陽の象意である心臓に不調が生じる可能性があります。

この場合、心臓に不調が生じるのは、土星からのアスペクトも1つの要因ですが、太陽が天秤座10度で減衰していることも大きな要因となります。

※実際の占い鑑定では、この他にも多くの要素を検討してから最終結論を出します。

※マーラカは、2室および7室といった、インド占星術において、死の原因になる(=健康に重大な影響を及ぼす)とされるハウスの支配星および在住星を指します。

高揚は必ずしも吉ではなく、減衰は必ずしも凶ではない

高揚と減衰の原則は、惑星の力量にかなり大きく関与し、その惑星の吉凶に大きな影響を及ぼしますが、高揚している惑星が必ずしもすべてにおいて吉ではなく、減衰している惑星が必ずしもすべてにおいて凶でもありません。

条件次第では、高揚していても良くない性質が出ることがあり、減衰していても良い性質が出ることがあるのです。

例えば、火星が高揚していると、活動的になる傾向がありますが、他の条件次第では、野心的になり過ぎることもあり、減衰しているときには、消極的になる傾向がありますが、他の条件次第では、火星特有のぎらぎらとした野心がなくなります。この場合、どちらが吉でどちらが凶と断定することはできません。

また、水星が高揚していると、合理的で知能が高くなる傾向がありますが、他の条件次第では、論理にこだわり過ぎるようになることもあります。逆に、水星が減衰していると、コミュニケーションに問題が生じることがありますが、他の条件次第では直感や霊感に優れることもあります。この場合も、どちらが吉でどちらが凶と断定することはできません。

それから、金星が高揚していると、優雅になる傾向がありますが、他の条件次第では、贅沢になりすぎるかもしれません。減衰していると、品がなくて貪る傾向がありますが、、他の条件次第では、良い意味で質素になることもあります。ちなみに、精神的な修行を実践している者にとっては、減衰している金星のダシャーは一般的に良い時期となります。

そのため、最終結論を出す前には、高揚と減衰以外にも、多くの要素を考慮しなければなりません。